介護・訪問看護の記録業務をGoogleツールと生成AIで軽くする方法

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この記事の要点

  • 介護・訪問看護の記録業務は、「同じ内容を何度も書く(二重入力)」「申し送りの文章づくり」「記録の集計」の3つを減らすと軽くなります。
  • Googleフォームとスプレッドシートで入力の入口を一つにすれば転記がなくなり、生成AIは記録の文章を整える・申し送りの要点をまとめるといった「下書き」に使えます。
  • ただし、利用者の氏名や病歴などの個人情報は、契約・設定・社内ルールが整った環境以外では生成AIに入力しないことが大前提です。

介護や訪問看護の現場では、ケアそのものと同じくらい「記録」に時間がかかります。サービスの提供記録、バイタルの記録、申し送り、ケア会議の資料、請求のための集計。紙に書いたものをパソコンに打ち直したり、同じ内容を別の様式にもう一度書いたりする作業も少なくありません。

株式会社善の関連会社では、2026年から「善ケア訪問看護ステーション」を運営しています。現場の記録業務の大変さを身近に感じている立場から、この記事では、特別なシステムを入れなくても、Googleのツールと生成AIで記録業務を軽くする考え方と、守るべき個人情報のルールを整理します。

※この記事は一般的な業務改善の考え方を紹介するものです。記録の様式や保存期間など、法令や指定基準で決められていることは、必ず各自治体や公式資料に従ってください。

記録業務で時間がかかる3つの場所

記録の負担は、大きく分けると次の3つの場所で生まれています。

場所 よくある状況 減らし方の方向
1. 二重入力 紙のメモ → 事務所でパソコンに打ち直し → 別の様式にも転記 入力の入口を一つにし、あとは自動で集める
2. 文章づくり 申し送りや経過記録の文章を、毎回一から考えて書く 定型の項目を選択式にし、文章は下書きを整える形にする
3. 集計と確認 月末に記録を見返して件数や時間を数える、記入漏れを探す 記録が一覧で見られる状態にし、漏れを自動で目立たせる

厚生労働省も「介護分野における生産性向上ポータルサイト」で、ICTの活用や業務の見直しによって、職員の負担を減らしケアの質を高める取り組みを紹介しています。大切なのは、ツールを入れる前に「どこで時間がかかっているか」を見える化することです。

記録業務のビフォーアフター図。上段「今」:手書きメモ→事務所でパソコンに打ち直し→別の様式に転記→月末に集計、の4つの箱が赤みのない灰色の矢印で長くつながる。下段「改善後」:スマホのフォームで1回入力→スプレッドシートに自動で記録→一覧・集計・申し送りに自動で反映、の3つの箱がシアンの矢印で短くつながる
入力の入口を一つにすると、打ち直しや転記の手間がなくなり、集計や申し送りにも同じ記録をそのまま使えます

Googleフォームとスプレッドシートで二重入力をなくす

最初に取り組みやすいのが、Googleフォームを「入力の入口」にする方法です。フォームで入力した内容は、自動でスプレッドシートに1行ずつ記録されます(フォームの回答の保存先を選択する)。

進め方の例

  1. 今の記録項目を書き出す:日付、利用者(記号やID)、担当者、実施したケア、バイタル、気づいたこと、申し送り事項など。
  2. 選択式にできる項目を決める:実施したケアや状態の区分など、毎回同じ選択肢から選べるものはチェックボックスやプルダウンにします。入力が早くなり、表記のゆれもなくなります。
  3. 自由記述は必要な所だけに残す:「気づいたこと」「申し送り」など、文章が必要な項目だけを自由記述にします。
  4. スプレッドシートで見る画面を作る:利用者ごと・日付ごとに絞り込んだ一覧や、月ごとの件数をまとめた表を、関数で自動作成します。
  5. 記入漏れを目立たせる:条件付き書式で、空欄の項目に色が付くようにすると、確認が楽になります。

詳しい作り方は「Googleフォーム×スプレッドシートで受付業務を自動化」と「スプレッドシートの転記作業をなくす方法」で紹介しています。スマホでの入力をさらに使いやすくしたい場合は、AppSheetでアプリにする方法もあります(AppSheetで業務アプリを作る判断基準)。

生成AIで記録の文章を整える

生成AIは、記録の「下書き」や「整理」に向いています。例えば次のような使い方です。

  • 箇条書きのメモを、記録の文章に整える:「食事半分、表情穏やか、午後に足の痛みの訴え」といったメモを、読みやすい文章にします。
  • 申し送りの要点を短くまとめる:1日分の記録から、次の担当者が知るべきことを3行にまとめます。
  • 表現をそろえる:人によって違う書き方を、事業所で決めた言い回しにそろえます。
  • 研修資料やマニュアルの文章づくり:個人情報を含まない業務手順の説明は、生成AIが特に役立つ場面です。

依頼文(プロンプト)の例

あなたは介護記録の文章を整えるアシスタントです。
次の箇条書きメモを、事実だけを使って、です・ます調の経過記録の文章にしてください。
・メモにない内容や推測は書かない
・医学的な判断や診断は書かない
・200文字以内
メモ:(ここに、氏名などを含まないメモを貼る)

ポイントは、「メモにないことを書かない」「判断はしない」と明確に伝えることです。生成AIは、もっともらしい内容を補って書いてしまうことがあります。記録は事実を残すものなので、出力は必ず担当者が読み直し、事実と違う所がないかを確認してください。依頼文の作り方は「生成AIプロンプトの書き方の基本」も参考になります。

個人情報の扱い:入力してよい情報・いけない情報

介護・医療の記録には、氏名や住所に加えて、病歴や心身の状態など、とても配慮が必要な情報が含まれます。個人情報保護委員会と厚生労働省は「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を公表しており、生成AIサービスの利用についても個人情報保護委員会が注意喚起を出しています。

区分 例 生成AIへの入力
入力しない 氏名、住所、電話番号、利用者番号と結びつく情報、病名・服薬などの詳細、写真 原則として入力しない
条件付き 個人が特定できないよう置き換えたメモ(「Aさん」など) 事業所のルールで認めた環境・サービスでのみ
入力しやすい 個人情報を含まない業務手順、研修資料、一般的な説明文 社内ルールの範囲で利用可

「条件付き」の扱いは、使うサービスの契約内容(入力した情報が学習に使われるか、どこに保存されるか)、管理者の設定、事業所のルールによって変わります。個人の判断で無料のサービスに入力することは避け、事業所としてルールを決めましょう。ルールの作り方は「生成AIの社内ガイドラインの作り方」で詳しく解説しています。医療情報を扱う場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」も確認してください。

記録情報を3つのトレーに仕分ける図。左のトレー「入力しない」(鍵のアイコン、氏名・住所・病名・写真のカード)、中央のトレー「条件付き」(注意マーク、置き換えたメモのカード、事業所ルールのバッジ)、右のトレー「入力しやすい」(チェックマーク、手順書・研修資料のカード)が並び、上にAIのアイコンがある
生成AIに入力する前に、情報を3つに仕分けます。迷ったら「入力しない」に入れるのが基本です

申し送りを短く・確実にする書き方の型

申し送りは、長く書くほど読む側の負担が増え、大事なことが埋もれてしまいます。事業所で書き方の型を決めておくと、書く時間も読む時間も短くなります。生成AIで整えるときも、この型を指示文に入れておくと出力がそろいます。

項目 書く内容 書き方のこつ
いつもと違うこと 状態や様子の変化 「いつもより」「昨日と比べて」と比較で書く
対応したこと その場で行ったこと、連絡した相手 事実だけを短く書く
次の人にお願いすること 確認してほしいこと、続けてほしいこと 「〇〇を確認してください」と依頼の形で書く
期限・時間 いつまでに、何時ごろに あいまいな表現(そのうち、早めに)を避ける

この型をGoogleフォームの項目にしておけば、入力するだけで申し送りの形が整い、スプレッドシートで日付ごと・利用者ごとに見返すこともできます。

小さく始めるための4つのステップ

  1. 一つの記録から始める:例えば「申し送り」だけ、「バイタル記録」だけなど、一つに絞ります。
  2. 2〜3人で2週間試す:入力のしやすさ、かかる時間、困った所を記録します。
  3. ルールを決めて共有する:入力してよい情報、確認する人、困ったときの相談先を1枚にまとめます。
  4. 効果を見て広げる:記録にかかる時間や記入漏れが減ったかを確かめてから、ほかの記録に広げます。

最初から全部の記録を変えようとすると、現場の負担がかえって増えます。「一つ変えて、楽になったら次へ」が長続きのこつです。

ゼンシンの支援

株式会社善の「ゼンシン」では、Google Workspaceを中心にした業務アプリ・システム開発や、現場で生成AIを安全に使うためのAI実践研修を行っています。関連会社の善ケア訪問看護ステーションでの経験も生かしながら、現場で使い続けられる記録の仕組みづくりをお手伝いします。

よくある質問

介護記録に生成AIを使っても大丈夫ですか?

個人情報を入力しない使い方、または事業所として契約・設定・ルールを整えた環境での使い方であれば、文章の下書きや要約に役立ちます。出力は必ず担当者が確認し、事実と違う内容が入っていないかを確かめてください。


Googleフォームで利用者の記録を集めても安全ですか?

組織で管理するGoogle Workspaceのアカウントを使い、フォームの回答を組織内に限定する、スプレッドシートの共有範囲を必要な人だけにする、といった設定を行うことが大切です。個人のアカウントでの運用は避けましょう。


パソコンが苦手な職員でも使えますか?

選択式の項目を中心にしたフォームなら、スマホで数回タップするだけで入力できます。最初は少人数で試し、入力しにくい所を直してから広げると、苦手な方にも使ってもらいやすくなります。


今使っている介護ソフトと併用できますか?

介護ソフトで管理している記録はそのまま使い、ソフトで扱っていない社内の連絡や集計、研修資料づくりなどにGoogleツールを使う、という分け方が現実的です。二重入力にならないよう、どの情報をどこに入れるかを最初に決めましょう。

まとめ

  • 記録業務の負担は、二重入力・文章づくり・集計と確認の3か所で生まれています。
  • Googleフォームを入力の入口にすると、打ち直しや転記がなくなります。
  • 生成AIは記録の文章を整える・申し送りをまとめる下書きに使い、最後は人が確認します。
  • 氏名や病歴などの個人情報は、ルールと環境が整うまで生成AIに入力しないことが大前提です。

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参考資料・出典

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この記事を書いた人

株式会社善 / 善のAX研究所

福祉の現場から始まった株式会社善が運営するコラムです。AI・Googleツール・業務改善について、日々の実務に役立つ考え方をお届けします。

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