属人化したExcel・GASを引き継ぐ方法|担当者が辞める前にやること

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この記事の要点

  • 担当者しか分からないExcelやGAS(Google Apps Script)を引き継ぐには、辞める前に「ファイルと仕組みの一覧を作る」「置き場所とオーナーを会社に移す」「自動で動く仕組み(トリガー)を確認する」「使い方と直し方のメモを残す」「後任と一緒に一度動かす」の5つを行いましょう。
  • 特にGASは、作った人のアカウントで動いていることが多く、アカウントを削除すると止まる場合があります。
  • 引き継ぎは退職が決まってからでは間に合わないことが多いため、ふだんから共有ドライブと簡単なメモで「誰でも分かる状態」にしておくのが一番の対策です。

「毎月の集計ファイルは、作った○○さんしか直せない」「自動でメールが届く仕組みがあるが、どこで動いているのか分からない」「担当者が辞めた途端、マクロがエラーで止まった」。中小企業では、便利な仕組みほど一人の担当者に頼りきりになり、引き継ぎで困ることがよくあります。

この記事では、属人化(特定の人しか分からない状態)のサインと、担当者が辞める前にやるべき5つのこと、引き継ぎのメモのテンプレート、外部に保守を頼む場合の考え方を整理します。

属人化のサイン

次のような状態が一つでも当てはまれば、引き継ぎの準備を始めたほうがよいサインです。

  • ファイルが担当者個人のパソコンや、個人のマイドライブに置かれている
  • 「このボタンは押さないで」など、使い方が口頭でしか伝わっていない
  • エラーが出たら、担当者に聞かないと直せない
  • 自動で届くメールや通知があるが、どこで設定されているか分からない
  • マクロやGASのコードに説明がなく、担当者以外は開いたこともない

引き継ぎ前にやる5つのこと

引き継ぎチェックシートの図。クリップボードに5つのチェック欄が縦に並び、上から「ファイルと仕組みの一覧を作る」「置き場所とオーナーを会社に移す」「自動で動く仕組みを確認する」「使い方と直し方のメモを残す」「後任と一緒に一度動かす」。3番目には「GASのトリガーは作った人のアカウントで動く」の黄色い注意ラベルが添えられている
5つのチェックを順に進めると、担当者がいなくなっても仕組みを止めずに済みます

1. ファイルと仕組みの一覧を作る

担当者が関わっているExcel・スプレッドシート・GAS・フォーム・AppSheetなどを書き出します。「何のための仕組みか」「誰が使っているか」「どのくらいの頻度で使うか」「止まったら何が困るか」を一緒に書いておくと、引き継ぎの優先順位を決められます。

2. 置き場所とオーナーを会社に移す

個人のパソコンや個人のマイドライブにあるファイルは、会社の共有ドライブに移します。共有ドライブのファイルは個人ではなく組織のものになるため、担当者が辞めてもファイルが残ります。マイドライブに置いたまま使う場合は、ファイルのオーナーを後任に変更します。Google Workspaceの管理者は、ユーザーを削除する前に、そのユーザーのファイルを別のユーザーに移すこともできます。

3. 自動で動く仕組みを確認する

ここがもっとも見落としやすいポイントです。GASで「毎朝8時に動く」「フォームが送信されたら動く」といった設定(インストール可能なトリガー)は、トリガーを作った人のアカウントで動きます。そのため、担当者のアカウントを停止・削除すると、仕組みが止まる場合があります。

  • GASのエディタの「トリガー」画面で、どんなトリガーが、誰のアカウントで設定されているかを確認する
  • 後任(またはチームで管理するアカウント)でトリガーを設定し直す
  • メールの送信元が担当者のアドレスになっていないか確認する

Excelのマクロの場合も、特定のパソコンの設定や、別のファイルの保存場所に依存していないかを確認しましょう。

4. 使い方と直し方のメモを残す

完璧な設計書は必要ありません。後任が困らないための、最低限のメモを残します(下のテンプレートを参考にしてください)。

5. 後任と一緒に一度動かす

メモを渡すだけでなく、担当者がいるうちに、後任が実際に操作して一度動かしてみます。月末の集計など、時期が決まっている作業は、その時期に一緒に行うのが理想です。

引き継ぎメモのテンプレート

項目 書く内容の例
仕組みの名前と目的 「請求一覧の自動作成:毎月の請求書の下書きを作る」
場所 ファイルのURL、共有ドライブのフォルダ、GASのプロジェクト名
使う人・使う時期 経理担当が毎月25日に使う
使い方の手順 どのシートに何を入力し、どのボタン(メニュー)を押すか
自動で動くもの トリガーの種類・時間・設定したアカウント、送信されるメール
つながっている先 参照している別のファイル、フォーム、外部のサービス
よくあるエラーと対処 「列を増やすと動かなくなる」「○○が空欄だと止まる」など
変えてはいけない所 シート名、列の順番、見出しの文字など
困ったときの相談先 社内の担当、外部の保守先

このメモは、ファイルと同じフォルダにGoogleドキュメントで置いておくと、探す手間がかかりません。GASのコードの中にも、処理のまとまりごとに短い説明(コメント)を書いておくと、後から読む人の助けになります。

退職が決まったときのスケジュール例

時期 やること
退職が決まったらすぐ ファイルと仕組みの一覧づくり、後任の決定
退職の1か月前まで 置き場所とオーナーの移動、引き継ぎメモの作成
退職の2週間前まで トリガーやメール送信元の切り替え、後任と一緒に動かす
退職後 アカウントはすぐに削除せず、仕組みが動き続けているか確認してから整理する

ふだんからできる属人化の防ぎ方

属人化を防ぐ3つの習慣を示す図。中央に共有ドライブのフォルダアイコンがあり、その周りに「置き場所は共有ドライブ」「メモはファイルと同じ場所に」「2人以上が触れる」の3つの円が配置され、矢印で循環している。左側には1人の人物が抱え込んでいる灰色の状態、右側には複数の人物で支える状態が描かれている
置き場所・メモ・2人以上で触れる、の3つを習慣にすると、引き継ぎが必要になっても慌てずに済みます
  • 置き場所は共有ドライブ:仕事のファイルは最初から共有ドライブに作ります。
  • メモはファイルと同じ場所に:仕組みを作ったら、使い方のメモもセットで残します。
  • 2人以上が触れる:使い方や簡単な修正を、少なくとも2人ができる状態にします。
  • 変更の履歴を残す:スプレッドシートの変更履歴や、GASのバージョン管理を活用し、いつ何を直したか分かるようにします。

AI担当者やIT担当者を社内に置くときにも、同じ考え方が大切です(社内にAI担当者を置くべき?兼任・採用・外部の3パターン比較)。

引き継ぎをきっかけに、使われていない仕組みや、もっと簡単な方法で置き換えられる仕組みが見つかることもあります。一覧を作った段階で、「続ける・作り直す・やめる」を決めておくと、後任の負担を減らせます。

外部に保守を頼む場合

社内に引き継げる人がいない場合や、仕組みが複雑な場合は、外部の専門家に保守を頼む方法もあります。依頼するときは、次の点を確認しましょう。

  1. 今ある仕組みの調査から頼めるか:説明のないコードを読み解き、一覧やメモを作るところから対応してくれるか。
  2. 作り直すか、そのまま使うかを一緒に判断できるか:古い仕組みは、直すより作り直したほうが早い場合もあります。
  3. 保守の範囲が明確か:エラー対応、小さな修正、機能の追加のどこまでを含むか。
  4. 成果物が会社に残るか:作ったコードやメモが会社のものになり、将来ほかの人に引き継げるか。

費用の考え方は「GAS開発の外注費用はどう決まる?見積もり前に準備する5つの情報」で紹介しています。

ゼンシンの支援

株式会社善の「ゼンシン」では、業務アプリ・システム開発として、担当者しか分からなくなったExcel・スプレッドシート・GASの調査や整理、作り直し、引き継ぎのためのメモづくりをお手伝いしています。仕組みの見直しから社内の体制づくりまで相談したい場合は、AI人材レンタルもご検討ください。成果物はお客様に帰属します。

よくある質問

担当者がすでに辞めてしまいました。どうすればよいですか?

まずアカウントを削除せずに残し、ファイルとGASの一覧を作ることから始めましょう。Google Workspaceの管理者であれば、ファイルのオーナーを別のユーザーに移すことができます。コードの読み解きが難しい場合は、専門家に調査を依頼する方法もあります。


担当者のアカウントを削除するとGASは止まりますか?

インストール可能なトリガーは、作った人のアカウントで動くため、アカウントを削除すると止まる場合があります。削除する前に、後任のアカウントでトリガーを設定し直し、動くことを確認しましょう。


引き継ぎのメモはどのくらい詳しく書けばよいですか?

後任が、担当者に聞かずに通常の作業と簡単なエラー対応ができる程度が目安です。テンプレートの項目を埋めるだけでも、何も残さない場合と比べて引き継ぎの負担は大きく減ります。


Excelのマクロはスプレッドシートに移したほうがよいですか?

複数人で使うファイルなら、スプレッドシートとGASに移すことで、置き場所の共有や変更履歴の確認がしやすくなります。ただし、移行には作り直しが必要なため、使う頻度と重要度を見て判断しましょう。


引き継ぎのために、コードを全部読み解く必要はありますか?

すべてを読み解く必要はありません。まずは、何のための仕組みか、どこにあるか、いつ動くか、止まったら何が困るかを把握することが大切です。そのうえで、重要度の高い仕組みから詳しく確認しましょう。

まとめ

  • 属人化のサインは、個人の置き場所、口頭の使い方、担当者しか直せないエラー、場所の分からない自動処理です。
  • 引き継ぎ前に、一覧・置き場所とオーナー・トリガー・メモ・一緒に動かす、の5つを行いましょう。
  • GASのトリガーは作った人のアカウントで動くため、アカウントを削除する前に必ず確認します。
  • ふだんから共有ドライブとメモ、2人以上で触れる状態を習慣にするのが一番の対策です。

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参考資料・出典

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この記事を書いた人

株式会社善 / 善のAX研究所

福祉の現場から始まった株式会社善が運営するコラムです。AI・Googleツール・業務改善について、日々の実務に役立つ考え方をお届けします。

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